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(この講演は、zoom配信となります)
分子サイズを鍵にして水圏溶存有機物の動態と物質循環的役割を再考する(Reconsidering the size-reactivity continuum model of aquatic dissolved organic matter)
湖沼、海洋等の水圏環境において、溶存有機物(DOM)は、その生産・変質・分解等のプロセスを通じて、炭素・窒素等の物質循環を駆動し、生態系に大きな影響を与えている。温暖化等の環境変動に対する水圏DOMの応答を明らかにするためにも、DOMの反応性(分解されやすさ)を決定するメカニズムが、特に重要な課題だが、未解明な部分が多く残っている。これまでに、DOMの特性の中でも、特に分子サイズと生分解性が関連する傾向が明らかになってきた。1996年には「サイズ-反応性連続体モデル」(比較的易分解な高分子DOMが微生物に分解を受けて、難分解な低分子DOMに徐々に変換されていくとするモデル:Amon & Benner, 1996)が提唱され、広く受け入れられてきた。しかし、このモデルの実験的な根拠は、提唱から四半世紀以上が経過した現在でも、ごく断片的でしかない。本発表の前半では、演者らが最近進めてきた、琵琶湖湖水等を用いた有機物分解実験により、DOMの分子サイズ別の分解速度を詳細に推定する研究を紹介する。分子サイズと生分解性の関係性について、従来のモデルでは説明できない実験結果が得られており、修正した新たなモデルを提案する。さらに発表後半では、DOMの分子サイズ別分解速度の知見を、琵琶湖における天然のDOM動態解析に応用した研究を紹介する。湖深水層は従来、「有機物がゆっくりと分解されていく場」と概ね考えられてきたが、我々の解析からは、特に高分子DOMの活発な生産と分解が起きており、「隠れた高分子DOM循環」が存在することが示唆された。こうしたDOMの動態が、物質循環や微生物生態系に果たす役割についても議論したい。
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南極湖沼における溶存有機物の分子組成の規定要因(Drivers of molecular composition of dissolved organic matter in Antarctic lakes)
一滴の天然水の中には数百の有機成分が溶けており、これらは総称して溶存有機物と呼ばれている。溶存有機物を構成する各成分は極めて希薄(< nMオーダー)であるが、総体として地球表層最大の炭素プールのひとつとなっている。溶存有機物の分解性は分子組成に大きく依存していることが知られており、分子組成の規定要因の解明が求められる。しかし、分子組成の複雑さや影響要因の多様さから、分子レベルでの理解には多くの課題が残っている。ひとつの方策として、考慮すべき影響要因を限定することで、結果の解釈を容易にすることが期待される。
本発表では、人為的な影響が小さく、集水域土壌由来の有機物流入も限定的な南極の湖沼における「微生物由来」溶存有機物の分子組成を規定する環境要因について発表する。また、このような単純系において、溶存有機物の分子的多様性(Chemodiversity)がどの程度発達しうるのかについても、進行中の解析を交えて考察する。
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